2007/10/18

静かな旅立ち


肝不全で末期のホームレスの男性Aさん。

Aさんが救急車で運ばれてきた時、長いことお風呂に入っていなかったのかすごい臭いだった。こんなんじゃ何もできやしないとさっそく師長みずからお風呂に入れていた。

そして何日か後にAさんは旅立っていった。

みよりもなく誰にも看取られることなく孤独に亡くなっていった・・・とみんな思っていた。

けれども、デス・カンファレンス(亡くなった患者さんについて話し合い、ターミナル・ケアについて振り返るカンファレンス)でパストラル・ケアのシスターが、実はAさんとこんなやり取りがあったんだと話してくれた。

Aさんが亡くなる前々日の夕方。

Aさん 「シスター・・・天国って本当にあるのかねえ」

Sr 「私はあるって信じてるわよ。どうして?」

Aさん 「あったらいいなあ・・・天国が本当にあったらわしもそこに行きたいなあ。わしでも天国に行けるかなあ。」

Sr 「そうねえ、お祈りをしてみたらどうかしら?あなたがキリスト教の病院に運ばれてきたのもご縁というものよ。」

シスターとAさんが話していたとき、ちょうど病院の隣にあるシスター達が住んでいる修道院でお祈りの時間を知らせる鐘がなったという。

Aさん 「あれは何の音?」

Sr 「あれはねえ、神さまにお祈りをする時間ですよって知らせる鐘なのよ。」

Aさん 「へえ・・・。なあ、シスターお祈りってどうやるんだ?」

Sr 「そうねえ、あなたも神社やお寺にいったことがあるでしょ。そこで手を合わせてお願いごとをしたように、手を合わせて神さまに向って今の気持ちをそのまま言えばいいのよ。」

Aさん 「お祈りってわしもしていいのか?」

Sr 「誰でもしてもいいのよ。私もあなたのためにお祈りしてるわね。」

そして、翌日シスターがAさんのとこにいくと、Aさんは顔を輝かせてこう言ったという。

Aさん 「わしなあ、あの後ずっとお祈りしてたんだ。一晩中あんたのとこの神さんに祈ってたんだよ。」

Aさんはシスターと話した後一晩中神さまに「天国に行けますように」とお祈りをしていたという。

そしてその翌日、Aさんはとても静かに穏やかに息を引き取った。

私は受け持ちになることもなかったので、その患者さんについてほとんど知らなかった。 けれどパストラルケアのシスターからこの話を聞いてびっくりした。

そんなことがあったんだ・・・。

なんだかうまく言葉が見つからない・・・。
ただイエスの存在を感じた。そして、よかったと思った。

Aさんは一人じゃなかったんだ。イエスがその人と共にいてくれたんだ。
そして「天国に行きたい」というAさんの望みは確かに届いたんだ。

本当によかったと思った。

イエスはいつも働いている。 特に孤独な人、苦しんでいる人、見捨てられた人の中で。

神様の憐れみを最も必要とする人の中で。

1 件のコメント:

  1. はじめまして。ランキングサイトから来ました。この話を読んでとっても感動です。

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